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せん長の「ぽんぽこコラム」

キネステーゼ・アナロゴン

 「キネステーゼ・アナロゴン」??????って、はてな?がたくさん浮かびますよね。この言葉、何なのでしょう。キネステーゼとは、身体を動かすときの「コツ」や「感じ」などの運動感覚(「動感」と言う方が学術的には意味が近い)を表すフッサールによる造語です。アナロゴンとは、ある運動のもつ動きの仕組み(運動局面と運動リズム)にほとんど大きな違いがない類縁性をもつ、すでに習得している動きのことです。今回は、私の専門研究領域である運動発達における子供の動作習得やそれを支える保育者の在り方についてお伝えします。

 運動ができるためには、これまでの運動経験をもとにして、「できそうな気がする」と思えるような具体的な動きの感じが必要です。そこで、今までに味わってきた運動感覚と、「今、子供が取り組んでいる運動」の感覚をつなぐ言葉掛けが重要になってくるのです。子供は今までに味わったことのある運動感覚と、これからやろうとする運動の感覚とが似ていることに気付けば、「あの感じでやれば、できそうだな」というある種の自信をもって運動に挑戦していくと考えられます。

 例をあげます。足を地面につかないでブランコをこぎだす感じは、鉄棒の「足かけ振り」のキネステーゼ・アナロゴンと言えるでしょう。また、雑巾を絞る(縦絞り)動作は、棒を両手で縦に持って「グッ」と肘を伸ばして前へ突き出す(剣道みたいな)動作との類縁性があると考えられます。このようなことを念頭に置いて子供との生活を送ると、保育の新たなおもしろさが感じられるかもしれません。(中村 崇)

 

初出:ぐんしよう №204 (一社)群馬県私立幼稚園・認定こども園協会