第19回 ぐんま教育賞 表彰式
~分かち合おう! 育てる知恵、教える知恵~


杉の子賞

 

講 評

 ぐんま教育賞選考委員会委員長 石崎 泰樹


 第19回ぐんま教育賞「杉の子」賞には、小・中学校、高等学校等における実践的教育に関する論文40編の応募がありました。いずれも群馬の教育の向上を願い、現場の課題とその解決を目指す取組みを考察したものです。選考委員会ではさまざまな観点から論文を評価し、協議して最優秀賞1編と優秀賞3編を選考しました。

 最優秀賞は「地域とともに「守る」・「伝える」心を育む教育活動の実践」です。館林市において地域コミュニティ等との連携のもと、総合的な学習の中で伝統や文化の良さを守り・伝える心を育む、優れた取組みの論文です。

 優秀賞は、「小学校外国語における一人一台端末利用の在り方」、「主体的に数学の問題発見・解決に向かう生徒の育成」、そして「農業教育における地域連携プロジェクトの取組」の3件です。

 応募いただいた全ての方の思いが群馬県の教育現場で生かされ、“教育県ぐんま”が発展することを期待いたします。

第19回 ぐんま教育賞選考委員(敬称略)


委 員 長  群馬大学学長             石崎 泰樹

副委員長 元群馬県教育委員会委員長       坂本 壽枝

委  員 上毛新聞社編集局長          小渕紀久男

委  員 群馬県PTA連合会会長        清水あゆみ

委  員 群馬県教育委員会事務局義務教育課長  栗本 郁夫

 

各論文はタイトルをクリックして閲覧できます。

最優秀賞

地域とともに「守る」・「伝える」心を育む教育活動の実践

~総合的な学習の時間における伝統や文化の継承を通して~

 

館林市立第四小学校

教諭 岡松 亮


概要 

 本稿は、総合的な学習の時間において、児童が地域と共に我が国の伝統や文化のよさを共有し、継承していくことを目指した学習活動とその成果を示したものである。実際の箏の演奏や調査活動などの学習を通して、児童は地域で伝統を「守る」方々と協働し、校内から地域へと「伝える」対象や場面を段階的に広げていった。その結果、実感を伴って伝統を継承することの意義を理解し、自らの考えや思いをもって学んだことを表現したり、箏の演奏をしたりすることができた。


受賞者より

  ぐんま教育賞を頂戴いたしました本校の実践は、地域とともに「守る」・「伝える」心を育む教育活動の実践〜総合的な学習の時間における伝統や文化の継承を通して〜を主題としております。本校は​​、平成30年度から現在まで館林市コミュニティ・スクールモデル校に指定され、「連携・協働」を重点に地域住民と学校課題や目標を共有し、地域社会とのあたたかな「つながり」のなかで子どもたちの健全育成に努めています。この地域の教育力を生かした特色ある教育活動の一つとして、箏を中心とした伝統や文化に係る探究的な学習があります。

 本実践は、総合的な学習の時間において、子どもたちが地域と共に我が国の伝統や文化のよさを共有することを目指し、2つの視点を軸に学びを展開していきました。一つ目は、「守る」視点です。児童は、伝統や文化の現状を調査し、地域の箏曲演奏家、和楽器製作者、近隣の高校生など、多様な立場で「守る」人と関わりながら探究課題に迫ることで、単に「箏のよさを広めたい」という思いにとどまることなく、「箏の演奏が、伝統や文化を伝えることにつながる」という、実感を伴った思いへと変容していきました。二つ目は、「伝える」視点です。学びの過程で得た知識や思いをもとに、学校から近隣の幼稚園、そして学校を支える地域へと「伝える」対象を段階的に広げていくことで、子どもたちは、伝統や文化そのもののよさを伝える必要性に気付き、箏の演奏を通して地域とそのよさを共有できました。この演奏は、「箏」の音色だけでなく子どもたちの思いを伝えるものとなり、本日お聴きかせできないのが残念です。探究的な学習を通して、子どもたちは、伝統や文化を「守り」・「伝える」という思いや心が人との「つながり」を深め、その「つながり」から努力や協力の素晴らしさ、自ら考え動き出す大切さ、そして、自分が地域社会を担う存在であるということを実感できたと考えます。 

 私は、本実践を通して、地域社会との「つながり」が、子どもたちの夢や希望を見いだす一助となること、そしてそれらの実現に向け、子どもたちが自ら考え動き出す契機となることを学びました。この学びを「出発点」とし、豊かな「心」を育む教員となれるよう、引き続き子どもたちの学びを支えて参ります。

 結びに、今日に至るまで様々な場面でご支援・ご協力をいただいた皆様に、感謝申し上げ、挨拶といたします。

 

優秀賞

小学校外国語科における一人一台端末活用の在り方

~主体的・対話的で深い学びの実現を目指して~

 

前橋市立桃瀬小学校

教諭 長谷川 夏子


概要

 本研究は、小学校外国語科における一人一台端末の効果的な活用法の提案として、授業内での10の実践と、家庭学習の3つの実践をまとめたものである。具体的には、自分が英語を話している姿を動画で見ながらルーブリックシートに基づいて自己評価をしたり、身近にある英語の意味を調べてオクリンクのカードにまとめたり、AIに発音チェックしてもらったりした。一人一台端末導入により、今まで不可能だったことが可能となり、家庭学習の幅も広がった。 


受賞者より

 この度は、賞に選んでいただき、大変光栄です。指導・協力してくださった周りの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。私は、学生時代に英語の楽しさを教えてもらったことがきっかけで、英語の教師になりました。今度は私が、英語を通して群馬の子どもたちに影響を与えられる教師になって、育ててくれた群馬県や恩師に恩返しをしたいです。

 

優秀賞

主体的に数学の問題発見・解決に向かう生徒の育成

-生徒が「問いを生み出す問題」と「思考をゆさぶる問題」の設定を通して-

 

富岡市立富岡中学校

教諭 上田 将大


概要

 本研究は、中学校2年生を対象に、数学科において主体的に問題発見・解決に向かう生徒の育成を目指したものである。生徒から自然と「問い」が出るようにするため、「問いを生み出す問題」「思考をゆさぶる問題」を設定する。生徒が表出した「問い」を授業で解決していく授業展開を繰り返し行うことで、教師が問題を提示し、それを生徒が解決するといった今までの態度から、自ら問いを見いだし問題解決に向かうようになった。


受賞者より

 すばらしい賞をありがとうございます。今回の研究は、富岡市教育研究所にて、様々な方々のお力添えをいただきできたものです。数学の授業で主体的に学ぶ生徒の育成のため、生徒たちの「問い」をどう表出させ、どう授業に生かすのか、研究所の方々と共に1年間研究しました。これからも、様々な人たちとの出会いの中で、学び、変わり続ける教員でありたいと考えています。 

 

優秀賞

農業教育における地域連携プロジェクトの取組

 

群馬県立勢多農林高等学校

教諭 澁澤 遼子


概要

  現在、ヒトの生命活動を支える農業の重要性が再認識され、その産業形態も刻々と変化しており、農業教育もその変化への対応が求められている。本研究では、授業・研究部活動に地域連携プロジェクトを組み込み、将来地域産業の発展を担う生徒の資質・能力育成を目指した。また地域密着型のプロジェクトを実施することにより、生徒の地元農業や食に対する意識にどのような変化があるのか、調査研究を行った。


受賞者より

 このような賞をいただき光栄です。この活動は、多くの先生方の協力のもと実践することができました。今後も学校と地域と、築き上げた伝統あるつながりを大切に教育に生かせればと感じています。生徒の活動を温かく支援していただいた地域の方々をはじめとする、全ての方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。