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次回が楽しみになる園内研修
みなさんは、園内研修についてどのようなイメージをもっていますか?ある報告によると「お腹が痛くなる」「自分の意見に反論されたらどうしよう」などが挙げられていました。そこで今回は、「次回が楽しみになる園内研修」について考えていきたいと思います。
まず、確認しておきたいのは、園内研修を行う目的です。園の置かれてる状況により様々な目的が考えられますが、大きな目的は質の高い保育の実現と言えるのではないでしょうか。質の高い保育とは、幼児の視点から見ると自由感あふれる保育であり、保育者側から見ると幼児の遊びの中に教育的価値を見いだし、その幼児の発達の課題に幼児自身が向かっていく状況をつくることだ言えます。質の高い保育を支えるのは、幼児理解です。人間は思い込みで目の前の現象を見ていると言われます。「思い込み」を外さないと幼児理解は深まりません。そこに有効に働くのが「園内研修」だと考えられます。多様な視点に触れ、各保育者が自身の幼児理解に揺らぐ体験をすることで「思い込み」を外すのです。
それでは保育カンファレンスを例に、「次回が楽しみになる園内研修」を探りましょう。保育カンファレンスが有効に機能するためには、「話の具体性」「発言の対等性」が必要です。「話の具体性」を実現するために、従来は事例を活用してきました。そのよさについては申し上げるまでもありませんが、逆に事例の準備に負担感を抱く場合もあります。そこで、写真を活用してみてはいかがでしょうか。写真とそれにまつわる話を提供することで具体性を実現していきます。また、「発言の対等性」が保障されるためには、管理職やベテラン保育者が導くという「伝達型」からの脱却が必要です。そこで、管理職等はファシリテーターや板書役を担い、各保育者のよさが発揮される状況づくりを行います。このような環境が整った上で、建前でなく本音で話すことを推奨していきます。保育上の問題意識について保育者自身の内面をさらけ出す必要があるからです。そして、相手を批判したり優劣を競おうとしたりしないで、相手の意見が間違っていると感じた場合でも、それをよい方向に向けて建設的に生かす方向を大事にします。ポジティブな発言を多くすることです。そして、「正解」を求めようとしないで、多様な意見が出されることを目指し、まとまらなくても時間で終わりにすることが重要です。つまり、多様な視点に触れ、自分の視点に揺らぐことに意味があるからです。
おわりに、最近体験した私の揺らぐ体験について記します。ある園を参観させていただいたときの話です。友達の上履きを履いて嬉しそうな表情で歩くAちゃんがいました。その後、違う友達のものも履いていました。私は、その上履きの持ち主のことが好きなのだなと理解しました。数日後、ラジオから「誰かの靴を履いてみること」の話題が聞こえてきました。それは、「エンパシー(共感・感情移入)」についての解釈だったのです。私はドキッとして、記録用に撮っていた映像を見返しました。Aちゃんが履いていた上履きの持ち主の二人とも、先生の膝に腰掛け絵本を読んでもらっていたのです。もしかして、Aちゃんはこの二人の上履きを履くことで、先生の膝で絵本を聞く情況を味わっていたのかもしれません。 (中村 崇)
初出:ぐんしよう №189 (一社)群馬県私立幼稚園・認定こども園協会